命令する権利だけ手に入れて、労働者保護は行わないのが、労働法制逃れの本質


労基署が市に是正勧告

「健診補助スタッフも労働者」

 堺市が健診などの補助業務に従事する看護師らを「有償ボランティア」扱いしていた問題で、堺労働基準監督署は昨年12月27日、労働者として扱うよう是正勧告を出した。また、同様に和泉市でも、健診業務に従事する医師や看護師らと雇用契約を結んでいなかったことがわかった。

 堺労基署は「3日間の年休取得が認められなかった」という女性看護師の訴えを受けて、市から事情聴取。市は「有償のボランティアで、雇用関係にはない」などと主張していたが、労基署は業務の実態から「労働者として扱うべきだ」と判断し、年休取得を認めなかったのは不当だとして、市に3日分の賃金を女性に支払うよう求めた。

 これまで市は、健診の補助スタッフはボランティアとして扱い、労災保険にも加入せず、業務中や行き帰り時の事故は傷害保険で対応することにしていた。

 しかし、補助スタッフも労働者として認められたことで、事故などが起きた場合、労災と認定される可能性がある。このため、市は今後の契約のあり方について検討を進めている。

和泉市でも

 堺市と同様に、和泉市でも健診など保健業務に従事するスタッフと雇用契約を結ばず、「有償ボランティア」扱いしていたことが、市への取材で分かった。

 市健康づくり推進室によると、健診スタッフは「保健事業出務者」と呼ばれ、登録制となっている。登録者は医師や理学療法士、心理判定員、保健師、看護師など約120人。

 資格によって報酬は異なり、医師は1回あたり2時間で2万5千円、看護師や保健師らが4時間で5千円など。中には100日以上従事し、年間100万円以上を受け取る人もいる。

 こうした契約方法は、保健事業が府から市に移管された1997年から続いており、市は府のやり方をそのまま引き継いだという。

 藤原一也室長は「これまで、問題意識もないまま続けてきたが、堺市への勧告を受け、和泉市でも契約方法を見直し、改善していく」としている。

訂正

 昨年12月19日付記事でボランティアの活動について、「採血やBCGの接種を行う」とあったのは「BCG接種の介助や採血を行う」の誤りでした。(「泉北コミュニティ」2020年1月16日号


なんで、こういう(「採血やBCGの接種を行う」→「BCG接種の介助や採血を行う」)訂正が出たか、すなわち「介助」という語句が挿入され、言葉の順番も変わったかというと(そりゃ当然、当事者たちからクレームが来たのだろうが)、「あくまでも(有償)ボランティアであり、当該業務(医療行為)に相応の責任をもって/負って関わるのでない、補助的な立場での関わりですよ~」というアピールなのだろう。


なお、保健師助産師看護師法(保助看法)第5条において、看護師らの業務は、「療養上の世話」と「診療の補助」に大別されており、

  • 「療養上の世話」(入院患者の身の回りの世話をするとか)は、原則として看護師らが独立した業務として行える。
  • しかし、「診療の補助」は、医師の指示を受けることが欠かせない。(cf. 保助看法第37条「保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない」 )
  • そして、採血やBCG接種は、「診療の補助」に他ならない。

わけですよね? (*'ω'*)


そもそも、「有償ボランティア」というのは、(シフトに入らねばならない、などで)関わり方の自由が十全になく(≒真に自発的たりえない)、さまざまな拘束を伴う活動(=事実上の”労働”)に対価を支払いたい/受け取りたいが、法律(最低賃金法)が定める最低賃金に加えて/または、雇用保険や労災保険等の労働者保護のコストを負担しきれない市民団体等がひねり出した、きわめてグレーな働かせ方/働き方だ。


堺市だと、最低賃金に倍する時給2千円に及ぶ”対価”が支払われているわけで、こんなの、「偽装請負」と同じ、労働法制逃れ以外の何物でもない。

cf. 偽装請負を行う企業の何が卑怯なのかをまとめてみた (株式会社アクシア代表取締役・米村 歩)

・「良い仕事をする」という大義名分 →そんなわけないだろボケ。
ルールは守らなければならない、話はそこからだ
・偽装請負の現場で行われていることは何なのか

・「労働者に命令できる」とはどういうことなのか

命令する権利だけ手に入れ労働者保護は行わないのが偽装請負の本質

・「でも一緒に働いた方が効率的じゃん」という議論は無意味

全て自社の統制下でコントロールしたいのであれば雇用するリスクを負え

・・・というわけで、偽装請負ならぬ、偽装ボランティアを使っている我らが堺市は、卑怯者呼ばわりを免れないだろうなぁ。(ToT)


なお、


<記者のつぶやき>

山本裕 ▼堺市が健診などに従事する看護師らをボランティア扱いしていた問題。永藤英機市長は「労働者にあたる」とした労基署の判断に納得がいかないようだ。しかし、年間百回以上業務に就き、何十万円も報酬があれば、れっきとした労働者。年休取得だけが問題なのではなく、事故の際に労災が認定されず不利益を被る恐れもある。この点は担当課長にも指摘したはずなんだけどなあ。 (「泉北コミュニティ」2020年1月23日号


という記者さんのつぶやきもあったのだが、この先については、また後日。

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