3時間で謝礼6千円の”ボランティア”
検診業務だけの看護師や助産師 堺市がボランティア扱い
労災は適用外 監督署が事情聴取
堺市内の保健センターで行っている乳幼児健診、がん検診に従事している看護師や助産師が「有償ボランティア」扱いになっていることがわかった。市は「短時間の補助的業務のため」としているが、労災が認められないなど従事者が不利益な扱いを受ける恐れもある。堺労働基準監督署も関心を示し、市から説明を聞くなどしている。
市健康医療推進課によると、乳幼児健診やがん検診は、医師や市職員が中心となって実施しているが、その他のスタッフは市の「保健医療業務協力従事者」に登録している看護師や助産師に業務を依頼している。現在の登録者は約180人で、1回の業務で依頼する人数は3、4人程度。約3時間の業務で「出務謝礼金」として6200円を支払っている。同課は「補助的な業務」としているが、採血やBCGの接種を行うこともある。また、新生児や妊婦の訪問指導もあり、かつては結核患者の経過観察のための家庭訪問も行っていたという。新生児の訪問指導の謝礼金は2210円になっている。
登録者に必ず業務の依頼があるわけではなく、全く依頼のない人がいる一方、年間100回程度の依頼を受ける人もいる。
市は、協力従事者について「有償ボランティア」と位置づけ、雇用関係は認めていない。このため労災は認められず、業務中の事故などには傷害保険で対応し、通勤災害については適用されないという。
この制度は1987年に始まったが、理由は不明。同課の河盛俊生課長は「協力従事者の方々には雇用関係はないということを理解したうえで、登録していただいている。都合のいいときにだけ働けるので続けやすいという声もある。雇用契約を結ぶことになれば、かえって敬遠されるのではないかとの不安もある」と説明。そのうえで、労基署から改善を求められたときは「雇用契約を結ぶことを含めて検討したい」と。
大阪狭山市では3か月ごとのパート契約などを結び、富田林市も半年ごとのアルバイト契約だ。 (「泉北コミュニティ」2019年12月19日号)
市役所の人にちょっと聞いてみたいのは、
- 「短時間の補助的業務のため」だったら、雇用関係を結ばずに(有償)ボランティア扱いでよいのか?
「都合のいいときに働ける」というのは、仕事とは違う=「活動」なのか?
との2点。
むろん、そんな道理はない。
3時間程度以内の「補助的業務」なら有償ボランティアでいいんだったら、世間の短時間・補助的業務は、片っ端から有償ボランティアに代替されるだろう。
それに、人々は「都合のいいときに働ける」から、パート/アルバイト契約で働くわけで、それを有償ボランティア扱いにするのは、役所が「都合のいいように使えるから」にほかなるまい。
なお、当該「活動」(それにしても、「保健医療業務協力従事者」って、絶妙なネーミングですね。「保健医療『業務』従事者」でなく、「保健医療業務に『協力』従事する者」ということで、この辺りのことを重々承知した人がつけたとしか思えない)中に起きた事故は、一般的には有償ボランティアも対象となる「ボランティア活動保険」にも「ボランティア・市民活動行事保険」にも非営利・有償活動団体保険にもすべて適応外と思われるため、役所の建物内の事故には、役所が建物内で起きた事故を対象に加入している損害保険で対応し、そこから一歩出たら、まったくの自己責任になっているのだろう(「通勤災害については適用されない」というのは、そういうこと。たとえば、従事場所への行き帰りで起きた事故には、本人が加入している任意保険で対応する(≒させる)だけの話。かつては従事者が結核患者の経過観察のための家庭訪問を行っており、現在も新生児の「訪問」指導を行っているというが、そこで事故に巻き込まれても、労働法制と保険の穴に落ちてしまった従事者を、役所はまったく助け(られ)ないだろうな。*'ω'*)。
〇小野晶子「「有償ボランティア」という働き方 ─その考え方と実態─」(労働政策レポート、2005年、vol.3)
〇小野晶子「「有償ボランティア」 は労働者か? 活動実態と意識の分析から」(日本労働研究雑誌、2007年、No.560)
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