君は「DIYのいえ」に行ったか!?

今年の2月16日に、大阪府住宅供給公社・茶山台2丁団地に「DIYのいえ」がオープンして、2カ月半が過ぎた。メディア報道もいくつか出ているが、なかなか興味深い。


  • オープン前(2019年2月12日)に公社から出されたプレスリリースは、こんな感じ
  • それからひと月後(2019年3月13日)に公社から出されたニュースは、こんな感じ


で、東洋経済ONLINEで2019年3月18日に配信された記事がこちら:


入居希望者が続々集まる「茶山台団地」のすごみ~DIY工房やニコイチ住戸で若年層を惹きつける

(記事はじめ)

①ママさんが工具片手に四苦八苦。その様子をちょっと心配げに見守るパパと幼い子ども。そして、微笑みながら寄り添うご近所の高齢者。これはある団地での様子である。

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②工房の運営にはDIYショップが協力している。その経営者は「DIYをもっと身近に感じてもらえる機会を模索していましたが、このような場所があると若い人たちが気軽にこの世界に入ってもらえます。ですので、私たちにとっても参考になる取り組みです」とうれしそうに語っていた。

③とくに筆者が驚かされたのが、子ども連れの若い夫婦が予想以上に多いことだった。団地というと高齢化や過疎化、老朽化が進行し、大変住みにくい環境と考えられ、敬遠されがちなイメージがあるからだ。

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④DIYに前向きな若年入居者が多いのは、同団地の供給を担ってきた大阪府住宅供給公社を中心とした取り組み「団地カスタマイズ制度」(2017年1月開始)によるところが大きい。同制度は入居者に原状回復義務がなく、好みに合わせて内装を変えられるというものだ。

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⑤とはいえ、丘陵地にあることから坂や階段が多く、高齢者には住みづらい環境であることは間違いなく、これは如何ともしがたいことだ。耐震改修を必要とする建物も増えるなど問題は山積している。

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⑥茶山台団地の再生策は、堺市が主催し、泉北高速鉄道や南海電鉄グループなどの企業、NPOが協力して展開する「シニア向けサービス創出支援事業」によるところも大きい。つまり、予算があるからできることなのだ。彼は、予算がなくなっても住民主体で団地再生に取り組めるような体制づくりの必要性を説いているわけである。

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⑦茶山台団地も同様だが、何より団地再生の取り組みはまだ始まったばかりである。月並みではあるが、それぞれの再生策のトライアンドエラーを許容しつつ、一過性の盛り上がりに一喜一憂せず長い目で見守ることが、今強く求められているように感じられた。

(記事おわり)

東洋経済ONLINE2019年3月18日、各段落はじめの(マル付き数字)は引用者)


この記事、突っ込みどころ満載で、憤懣やるかたなし(←死語?)である。


①ママさんが工具片手に四苦八苦~

←なんとあざとい表現。出だしでこれかよ。(=゚ω゚)ノ・・・と唖然とした。ライター稼業を始めるときに、「紋切り型の表現は使うなよ」と教えてもらわなかったのだろうか。旧態依然の性・年齢役割、偏見の塊のような表現である。ひでぇ。


②「工房の運営にはDIYショップが協力している。」

は、間違い。運営している(株)カザールホームは、DIYショップでは断じてない。筆者はここに出てくる経営者本人と名刺交換もしているはずなのに、ずるい。我田引水もいいとこだ。

(株)カザールホームのウェブサイトでは、「大阪で中古住宅リノベーションならカザールホーム」というタグがつけられており、正確にいうなら、「工房の運営は、中古住宅のリノベーションを手がける近隣の工務店が行っている。」だろう。

リノベーションが一般用語でないなら、上記(3月13日)の公社ニュースにあるように、「工房の運営には、地元堺市のリフォーム会社 株式会社カザールホームが携わっている。」とかだろう。ひどいよ、ひどい。


③とくに筆者が驚かされたのが、子ども連れの若い夫婦が予想以上に多いことだった。団地というと高齢化や過疎化、老朽化が進行し、大変住みにくい環境と考えられ、敬遠されがちなイメージがあるからだ。

←これ、ウソだと思う。だって、筆者の肩書、「住生活ジャーナリスト」だよ? 専門家じゃんか。一般紙の社会面を担当する新聞記者でさえ、ここまで露骨な無知とイノセントな驚きを装うか?


④「団地カスタマイズ制度」は、入居者に原状回復義務がなく、好みに合わせて内装を変えられる「部分がある」だけで、全てがそうじゃない。

公社のサイトでも、「公社住宅では、「自分の手で作ったり修理したりするDIY」ができるよう、住宅内部の一部(別紙「DIY届出書」参照)について、DIYを行っても原状回復義務が緩和されました。そのため、これまでと比べ入居者の皆様の好みの住まいづくりができる住戸になっています。」とあって、事実はこれ以上でもこれ以下でもない(あ、紋切り型の表現を使っちゃった。テヘ。(๑˃̵ᴗ˂̵)و)。

筆者はこのことを十二分に知っているはずなのに、この書き方はちょっとどうなの? せめて、「同制度は入居者に原状回復義務を緩和し、好みに合わせて内装を変えられる部分を広げたものだ。」くらいにすべきだったんじゃないか。


⑤耐震改修を必要とする建物も増えるなど問題は山積している。

というのもなあ…。茶山台団地(全体)の耐震補強は完了していて、残っている建物はもう(耐震基準に適合しないことを理由にさらに)改修・取り壊すこともなく、このまま行くんですが。(;・∀・)


⑥茶山台団地の再生策は、堺市が主催し、泉北高速鉄道や南海電鉄グループなどの企業、NPOが協力して展開する「シニア向けサービス創出支援事業」によるところも大きい。つまり、予算があるからできることなのだ。彼は、予算がなくなっても住民主体で団地再生に取り組めるような体制づくりの必要性を説いているわけである。

←違うちがう! そんなの誰から聞いたんだ。想像で書いてないか? 立ち上げの費用は若干出たけれど、維持に必要な(=予算がなくなる)運営費用なんて出てないぞ? (株)カザールホームは、月々の家賃も払ってるぞ? 利用者にはすべて無料で使ってもらってるから、予算面ではむしろマイナスやんか。ほんとひどい話だ。


・・・で、

⑦茶山台団地も同様だが、何より団地再生の取り組みはまだ始まったばかりである。月並みではあるが、それぞれの再生策のトライアンドエラーを許容しつつ、一過性の盛り上がりに一喜一憂せず長い目で見守ることが、今強く求められているように感じられた。

というように、再び紋切り型の文章で幕を閉じるのでありました(あのさ、知ってると思うけど、「DIYのいえ」は8月までの期間限定のオープンですよね。それを書かずに、「長い目で見守る」という表現を使うところがまた…)。あいやー。(=゚ω゚)ノ


ま、この記事のタイトル「入居希望者が続々集まる「茶山台団地」のすごみ~DIY工房やニコイチ住戸で若年層を惹きつける」からして、事実と異なる(←若年入居希望者が続々集まるのは、年に数戸しか供給・募集されない「ニコイチ」のみ。茶山台団地そのものは、駅から近いのに空き住戸が多くてガラガラ、公社の優先施策団地に位置づけられている)から、その中身もかくあるべし、だったかもしれん。(*'ω'*)


なお、4月11日に出たSUUMOジャーナルの記事:「賃貸団地をDIY工房に! 世代や地区を超え、DIYが住民をつなぐ!?」は、はるかに好感が持てますよ~。٩(๑❛ᴗ❛๑)۶


“The difference between the almost right word and the right word is the difference between the lightning bug and the lightning.” ― Mark Twain


(この項、つづく)

泉北コモンズ(仮)

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