泉北発、北欧経由、江南へ?

ちょうどひと月前に、堺市がこんな発表をしていた。


2月21日提供 独立行政法人都市再生機構との連携による新しいリノベーション住戸の入居者募集を開始します ~北欧の暮らしを、泉北ニュータウンではじめませんか~(堺市報道提供資料2019年2月21日


これ見て、どう思われます?


私は、「えー! “泉北スタイル”はどうなったの!?」って思った。


今回のURによるリノベ住戸は、「北欧のLagomな暮らしを、泉北で。」というのがコンセプトのようで、報道提供資料には、「※Lagom とは... スウェーデン語で「多すぎず少なすぎず、ちょうどよい」という意味。物質主義や消費主義とは反対の、適度で節度あることをよしとする考え方」と明記されている。

でも、まちに置かれているチラシにはそんな説明はなく、

Lagomな暮らし
家族や友人と、家のなかで自分らしく豊かに過ごす、北欧のライフスタイル。そんな暮らしをコンセプトにしたリノベーション住宅を、水や緑などの自然に囲まれた泉北につくりました。

とあって、「あ、Lagomという言葉は、『家族や友人と、家のなかで自分らしく豊かに過ごす』、そういう意味なのかな」と思うだろう(ちゃうねんちゃうねん、「ぼちぼち」という意味やって! *'ω'*)。

なお、事業者であるURのサイトには、「Logomな暮らし」(Lの次が“a”じゃなくて“o”)になっていて、もう、作っている本人たちが訳が分からなくなっているとしか思えない(ToT)。

北欧の人たちに、「これって、北欧風って言えると思いますか?」って聞いたら、苦笑されるんじゃないか。

私たちの多くは、外国で製造された日本語“風”プリントの服を着て歩いている訪日外国人を見て、閉口もしくは苦笑、さらには馬鹿にした経験があるんじゃないかと思うんだけど、自らのそういう経験はまったく顧みられないものなのだろうか?(ま、我々が住んでいるのは、「FENICE SACAY」を生んだ、歴史ある国際文化交流都市・堺だからな・・・強い外国”風”への憧れは、さもありなんか)。


いやー、それでも、「泉北スタイル」は、そういった「なんとか風」への憧れから脱却して、自分たちのオリジナリティを追求する新しい試みだと期待したんだけどな…。

堺市も、この事業には「泉北ニュータウン住戸リノベーション促進事業」(平成30年度は合計1,750万円)の中から金を出しているんだから、「いやいや、そこは泉北スタイルで行こうよ!」って、ちゃんと口出しすりゃいいのに。


「北欧の暮らし」って、こんなチープなもんじゃないよ。北欧に失礼だろう。

・・・行ったことないけど(笑)。


それはさておき、このチラシの北欧云々を見ていて、西村佳哲『自分の仕事をつくる』(晶文社、2003年)のまえがきを思い出した。

たとえば安売り家具屋の店頭に並ぶ、カラーボックスのような本棚。化粧板の仕上げは側面まで、裏面はベニア貼りの彼らは、「裏は見えないからいいでしょ?」というメッセージを、語るともなく語っている。建売住宅の扉は、開け閉めのたびに薄い音を立てながら、それをつくった人たちの「こんなもんでいいでしょ?」という腹のうちを伝える。

やたらに広告頁の多い雑誌。10分程度の内容を1時間枠に水増ししたテレビ番組、などなど。様々な仕事が「こんなもんでいいでしょ」という、人を軽くあつかったメッセージを体現している。それらは隠しようのないものだし、デザインはそれを隠すために拓かれた技術でもない。


北欧云々のこの仕事に、「こんなもんでいいでしょ?」を嗅ぎ取ってしまうのは、私だけだろうか?(*'ω'*)


なお、この下りは、以下のように続いていく。

また一方に、丁寧に時間と心がかけられた仕事がある。素材の旨味を引き出そうと、手間を惜しまずつくられる料理。表には見えない細部にまで手の入った工芸品。一流のスポーツ選手による素晴らしいプレイに、「こんなもんで」という力の出し惜しみはない。

このような仕事に触れる時、私たちは嬉しそうな表情をする。なぜ嬉しいのだろう。

人間は「あなたは大切な存在で、生きている価値がある」というメッセージを、つねに探し求めている生き物だと思う。そして、それが足りなくなると、どんどん元気がなくなり、時には精神のバランスを崩してしまう。

「こんなものでいい」と思いながらつくられたものは、それを手にする人の存在を否定する。とくに幼児期に、こうした棘に囲まれて育つことは、人の成長にどんなダメージを与えるだろう。


大人でも同じだ。人々が自分の仕事をとおして、自分たち自身を傷つけ、目に見えないボディーブローを効かせ合うような悪循環が、長く重ねられている気がしてならない。


そこにいる人の存在を否定するような住まい・まちでなく、また、自分の仕事をとおして、自分たち自身を傷つけ、目に見えないボディーブローを効かせ合うような悪循環の中にある仕事でなく、「あなたは大切な存在で、生きている価値がある」というメッセージをつねに与え合う仕事をし、そんな住まい・まちで、機嫌よく年をとっていきたいものだと思う。


ま、泉北スタイル、北欧スタイルの次は、江南スタイルを持ち込むという手もあるだろうけど、さ(笑)。

泉北コモンズ(仮)

「コモンズ」のコモンには、”顧問”と、”common(共有の/共同の)”を掛けています。 泉北に暮らす人たちの顧問'sになれるように、泉北に興味がある人たちの共有地(commons)になれるように、コモンの輪を少しずつ広げていきたいと思います。 あなたもよければ、泉北のまちの住民、応援住民、ふるさと住民、そして私たちの仲間になって下さいませんか? 2040年代の泉北は、自分たち/D!Yで創る

0コメント

  • 1000 / 1000