「何人来た」ではなく「何泊した」?

山田(桂一郎)――どこの地域でも、とにかく「入込数(宿泊・日帰りを区別しない単純な来訪者数)」を重要視するのが、とても不思議でした。ヨ-ロッパの観光統計はすべて延べ宿泊数が基本なのですが、私がツェルマットを紹介するときに「年間200万泊です」と言うと、「で、トータルで何人来てるの?」と必ず聞かれる。でも、その数を数えることにどれほどの意味があるのでしょう?

藻谷――泊まらない人が何人通り過ぎたって、その人たちはほとんどお金を落としていかないんだから、数えたってしょうがないじゃないか、と。

山田――おっしゃるとおりです。観光バスでどっと乗り付けてすぐ立ち去る団体客がいくら増えたところで、本当の意味で地域は潤いません。


藻谷――逆に、1人の人が1泊するのと4泊するのとでは、波及効果が全く違いますよね。つまり「何人来た」ではなく、「何泊した」で数える方が、実態に即していると。でも、日本ではどこもそれをやっていないですね。

山田――観光庁ですら、「訪日外国人旅行者1,000万人」という目標数字を掲げています。もちろん、結果的に1,000万人以上の外国人が来れば良いとは思いますが、最初に入込数ありきだと、それを達成するために、たとえば近くて人口の多い中国から安いツアー客を大量に呼びこもう、そのために値段を下げよう、というような話になりかねない。しかし、そうやってディスカウントを繰り返せば、当然サービスの質は低下し、満足度も下がります。その結果、稼働率を上げれば上げるほど利益が薄くなり、リピーターも減っていくという負のスパイラルに陥ってしまう。 日本の観光地がダメになった原因の一つは、まさにこのような「一見(いちげん)さん」を効率よく回すことだけを考え、リピーターを増やす努力を長く怠ってきたことにあると思います。観光地として一番重要なのは、実は顧客満足度とリピート率。満足度を上げ、リピート率を上げれば、お客様一人あたりの消費額も自然と上がりますから。

藻谷――日本でリピート率向上を最優先に考えている観光地というと、ディズニーランドくらいしか思いつきません。

山田――個々の宿や飲食店で努力しているところはたくさんありますが、地域全体としてリピート率を上げる取り組みをしているところはほとんどありません。そこには全く目が向いていないんです。(藻谷浩介『しなやかな日本列島のつくりかた』新潮社、2014年、pp.79-81)


泉北の今後の取り組みを構築していくうえで、私が圧倒的に大事にしたいものの一つが、これ。

もちろん、泉北において、「何泊したか」を数える意味と志向は(今のところ)ない。

ただ、ここに指摘されるエッセンスを自分のものにすることが基本であり、意味があり、お金が落ち、しょうがと潤いがあり、実態に即しており、満足度が上がり、そして、近道(⇔しかしそれは“非常識”)なんだろうな。

うーむ、一にも二にも、仲間が必要で、大事だなぁ。

泉北コモンズ(仮)

「コモンズ」のコモンには、”顧問”と、”common(共有の/共同の)”を掛けています。 泉北に暮らす人たちの顧問'sになれるように、泉北に興味がある人たちの共有地(commons)になれるように、コモンの輪を少しずつ広げていきたいと思います。 あなたもよければ、泉北のまちの住民、応援住民、ふるさと住民、そして私たちの仲間になって下さいませんか? 2040年代の泉北は、自分たち/D!Yで創る

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