想像力/創造力をもって、チープな地域振興はしない

藻谷(浩介)――今、日本ではチープな地域振興が持て囃されています。B級グルメ、単発イベント、そしてゆるキャラ。

山田(桂一郎)――ダメな地域って、その3つを必ずやっていますよね。その地域の既存の資源をしっかり活用して育てましょう、という話にならずに、新しい何かに飛びつきたがる。私は、町は育てるもの、「町づくり」ではなく「町育て」であるべきだと主張しているんですが。(中略)

藻谷――B級グルメも人が集まるだけで、まったく収益を生みませんよね。むしろ地域の優良な資源をB級品のイメージとともに叩き売るという悲惨な状況です。

山田――地元でとれるいい素材を使いながら、予算を抑えて振舞おうとするから、原価割れしてしまうんですよね。手の込んだ調理もできないので、せっかくの素材もまずくなる。当然のことながら、生産者は「何やってんだ、せっかくいい素材なのに」と怒る。地元の人同士の人間関係も悪くなり、農漁業者と商業・観光事業者の間に溝ができていく。それでいて地元の人は誰も儲からない。


藻谷――非常に残念ですよね。地域に貢献したいなら、もっと地域にお金が落ちて、循環することをやりなさいと言いたい。

山田――そもそも、A級品がないところにB級品は存在できないのに、いきなりBだけ作るから話がおかしくなるんです。宿泊も食事も、まずはその地域で一番と言えるものを提供できるようにするべきです。チープなものを作るのはその後でいい。実際、スイスでは、まず地元のフラッグシップになり得る地域に合った最上級ホテル、例えば5つ星ホテルをつくり、次に他のカテゴリーのホテル、4つ星、3つ星……と広げていくことで、ラグジュアリー層からカジュアル層までを取り込むことに成功してきました。最初に富裕層を相手にすることでサービスの質も上がり、観光リゾート地としての全体的なレベルも向上するのです。(中略)

藻谷――もともとそういう世界の人が客層なんですよね。でも、日本各地でそういう話をすると、「俺はそんな値段だったら食わんぞ」という反応が必ず出てきませんか。「いや、あなたと違って、富裕層は食べるんです」と言ってもわからない。自分とは違う世界を想像する力のない人が、高く売れるネタを二束三文にして売って喜んでいる。


山田――そういう例は多々ありますね。私は、地域ごとにまずは「ここがうちの最上位」というのを決めていくべきだと言っているんですが、意外と皆さん、自己評価がとても低いんです。しかも、高級ではなく、全てにおいて上質なものが必要なことも根本的に理解できていない。(中略)

藻谷――だって、お金持ちが最上級のマグロを手に入れて、さあ、何を合わせようかというときに、ワインよりも日本酒が合うかなと思ったとすると、そのとき、1本500万円のロマネコンティと福小町(2012年の国際ワインコンテスト(IWC)・SAKE部門で世界一位になった日本酒。720mlで1本5,000円だが、ある講演の際に「5,000円は高いか、安いか」と問うと、「高い」という人が7割くらいだった:引用者注)の価値はほぼ同じはずなんです。どちらも世界最高品質なんだから。それを5,000円で売って、なぜ高いという話になるんでしょう。もっと高くして、世界の金持ちに売り、その分で従業員のボーナスを上げたり、米を作る農家にもっとお金を払うというふうにすればいいのです。それがわからずに、とにかく安い値段で提供するのが商売だと思い込んでいる。人口が増えた時代に量で稼いだ記憶が、客が減る時代にもどうしても抜けない。(藻谷浩介『しなやかな日本列島のつくりかた』新潮社、2014年、pp.92-96)


「~をしない」んだったら、お前、何やるんだ!?となるのだが、そこが想像力/創造力の使いどころになるのだろう。(逆に言うと、想像力/創造力を発揮しようとしないから、単発イベントを含むチープな地域振興に、とりあえず手を出すことになる。そして、出した手を引っ込められずに、疲弊していく。)

実際には、意外と皆さん、想像力/創造力はある。ただ、自己評価が低いのと、それを使おうとしていないだけではないだろうか。

想像力/創造力を豊かに集めて、「俺はそんな値段だったら食わんぞ」ではないまちづくりを、俺は泉北でやっていきたいなあ。

泉北コモンズ(仮)

「コモンズ」のコモンには、”顧問”と、”common(共有の/共同の)”を掛けています。 泉北に暮らす人たちの顧問'sになれるように、泉北に興味がある人たちの共有地(commons)になれるように、コモンの輪を少しずつ広げていきたいと思います。 あなたもよければ、泉北のまちの住民、応援住民、ふるさと住民、そして私たちの仲間になって下さいませんか? 2040年代の泉北は、自分たち/D!Yで創る

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